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巨大楕円銀河M87のジェットに横波を発見 — ブラックホールから噴き出す流れの新たな姿を解明 —

2026/04/09

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紀基樹准教授(教育推進機構)らが参加する国際共同研究チームは、巨大楕円銀河M87の中心にある超大質量ブラックホールから噴き出すジェットにおいて、周期的な横方向の揺れが、ジェット内部を下流へと伝わる波(横波)として振る舞っていることを明らかにしました。本研究は、ブラックホール近傍で起こる現象の理解を深めるとともに、ジェットの内部構造やエネルギー輸送の理解に新たな視点をもたらす成果です。

日韓合同VLBI観測網(The KVN and VERA Array, 通称KaVA)。
下は本観測に参加した各観測局で、左からKVNのヨンセイ局(ソウル)、ウルサン局、タムナ局(済州)、VERA水沢局、入来局、小笠原局、石垣局にある電波望遠鏡の写真。 クレジット: 国立天文台/韓国天文研究院

巨大楕円銀河M87は、太陽の約65億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールを中心に持つ銀河であり、その中心からは細長い相対論的ジェットが噴き出しています。地球から約5500万光年の距離にありながら、その構造を詳細に観測できることから、ブラックホール研究において重要な天体として知られています。 本研究では、日本のVERAと韓国のKVNを組み合わせた観測網「KaVAアレイ」による観測データを用いて、ブラックホール近傍のジェット構造を精密に解析しました。その結果、ジェットの縁に見られる横方向の揺れが、単なる局所的な変動ではなく、ジェットの下流へ伝わる「横波」として振る舞っていることが確認されました。

観測された波は、ジェット内部における磁場の振動(アルヴェン波)によるもの、あるいはジェットの流れの不安定性によって生じたものであると考えられ、ブラックホール周辺で生じるエネルギーの伝わり方に新たな知見を与えるものです。今後は、より高解像度かつ長期的な観測を通じて、ジェットの根元付近における波の発生メカニズムの解明が期待されます。

図2:[中央パネル]M87ジェット輝度分布の稜線の時間変化(2013年12月から2016年6月の観測期間)。灰色で示された等高線はM87ジェット輝度分布を表します。すべての画像はジェット軸が水平方向に揃うよう、時計回りに18度回転されています。白い矢印は、稜線の動きの解析から得られた横波の全長を示しており、その値は約2.4 - 2.6光年(9 - 10ミリ秒角)です。この波の見かけの伝播速度は光速の約2.7 - 2.9倍に達します。
[周囲の4パネル] コアから1, 3, 7, 11 masの距離における各断面において観測された横方向振動を示しています。データ点は観測された横方向変位、実線は最良フィットモデルを示しています。横軸は時間(年)、縦軸はジェット軸に対する横方向の変位(ミリ秒角)です。振動周期は約0.94年です。 クレジット: Ro, Kino, Hada et al. (2026), ApJ

紀基樹 准教授は「今回とらえた波は約1年周期でしたが、さらに長い周期の波が存在する可能性もあります。こうした可能性を検証するためには、東アジアVLBIネットワークを用いて、M87ジェットの根元付近の動きを長期的に継続観測することが重要です。」と語りました。

今回の成果は、H. Ro, M. Kino, K. Hada ほかによる論文 “Transverse Oscillations and Wave Propagation in the Magnetically Dominated M87 Jet” として、米国の天体物理学専門誌されました。