ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
代表取締役社長
佐藤 雅志氏
1989年 工学部化学工学科 卒業


ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社
代表取締役社長
1989年 工学部化学工学科 卒業
2025年にポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)代表取締役社長に就任した佐藤雅志氏。1989年にサッポロビール(株)に入社して以来、エンジニアリングと人事を柱に、キャリアを積み上げてきた。「百の失敗よりも一つの後悔をしたくない」がモットーだと言う佐藤氏に、これまでのキャリアや学生時代の思い出、そして経営者としての矜持について、語っていただいた。
佐藤氏が代表取締役社長を務めるポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)は、2013年、サッポロ飲料(株)と(株)ポッカコーポレーションが統合して設立された。「ポッカレモン100」「キレートレモン」などのレモン飲料をはじめ、コーヒー、炭酸飲料、スープなどの商品を製造・販売している。
「『気軽に使えるレモンを提供したい』と考えて生まれたのが、ポッカコーポレーション時代から続く当社の主力商品、ポッカレモン100です。以来、当社ではレモン事業にひときわ力を入れており、レモンなら誰にも負けない、という自負があります。今は、『人と社会と向き合い、未来の食のあたりまえを創造する』という使命に基づき、事業活動を展開しています。また、ひらめきを大切にする社風があり、新しいことにも積極的に挑戦してきました。例えば、創業1957年当時、高価だったレモンを身近な商品として発売した事に始まり、その時代に合わせて様々な商品を発売してきました。まさに、“未来の食のあたりまえを創造”してきたというわけです」
佐藤氏は、カジノダイス 工学部化学工学科を卒業後、サッポロビール(株)に入社。「ものづくりでチャレンジができる会社」として、同社を選んだという。
サッポロビール(株)商品を前に
「大学では、化学工学科で流体工学について研究しました。ものづくりに興味があり、流体のことを研究した経験を生産現場で活かせるのでは…と考えたこと、お客様に直接届けられ喜んでもらえる商品づくりがしたかったこと、そして、コミュニケーションツールであるビールが好きだったこともあって、サッポロビールを選びました。決め手になったのは、ここならチャレンジができそうだと感じたこと。私が就職活動をしていた当時、エンジニアが少ない会社と見込み、少ないからこそいろいろなことができそうだという予感がありました」
サッポロビール入社後は、エンジニアリング部門に従事。国内のさまざまな工場をめぐり、大阪工場エンジアリング部長などを経て、2011年には全工場のエンジニアリングの責任者である生産技術本部エンジニアリング部長に着任した。
「新しい設備や生産ラインの導入、省エネや環境配慮の取り組み、コストと品質の管理など、入社前の期待通りいろいろなことに挑戦する機会に恵まれました。生産現場での仕事は、やりがいに溢れていました。大阪工場勤務時代には阪神大震災が、エンジニアリング部長時代には東日本大震災が発生し対応にあたるなどトラブルや苦労もありましたが、チームで乗り越えてきました」
「失敗もたくさんしてきた」と苦笑する佐藤氏。特に、新商品の製造や新技術を用いた生産工程は試行錯誤の連続だったと振り返る。
「生産現場ではテストを行う事が多いのですが、その際、想定と色が違う、キャップに傷がついている、ラベル印刷が歪んでしまった、栓の不具合で炭酸ガスが抜けてしまう…といった失敗を山のように経験してきました。そして、失敗するたびに、同じことは二度と起こさないぞと肝に銘じてきました。失敗の積み重ねの先に成功がある。順風満帆で成功したときよりも、苦労して失敗を乗り越えたときのほうが人は大きく成長できる。私自身、これを身をもって経験してきたので、今も社員には、『百の失敗よりも一つの後悔をしてほしくない。失敗を恐れず、挑戦してほしい』と、挑戦することの価値を伝えています」
長くビールの生産現場に携わってきた佐藤氏と、2013年にサッポロホールディングスの一員となったポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)との接点が生まれたのは、2016年から務めていたサッポロビール仙台工場長時代のこと。2019年、仙台工場の一角に、ポッカサッポロフード&ビバレッジの商品であるスープの生産ラインを作ることになり、業務の効率化も鑑みて両社の工場長を兼務することとなったのだ。そして、この出会いをきっかけに、2024年にポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)取締役常務執行役員となり、2025年には同社代表取締役社長に就任。佐藤氏は、「まさか自分が社長になるとは、入社当時はまったく思い描いていなかった」と言う。

自社商品を前にした佐藤社長
時は前後するが、2022年からはサッポロホールディングス(株)の取締役として、人事・総務・IT/DX担当やグループ人事戦略担当を務めた。「工場長時代から人に教えるのが好きで、人事や人材育成に関心があった」と言う佐藤氏。その根底にあるのが「人が好き」という思いだ。親しみやすい笑顔と気取らない姿勢には、佐藤氏の人柄がにじんでいる。
「みんなが頑張る姿や成長する姿を見るのがうれしくて。ホールディングスの取締役時代には、次の世代をいかに育て、活躍してもらうかを常々考えていました。取り組みの一例が、DX人材の育成です。全体のデジタルリテラシーの底上げをしつつDX専門人材を育てたいと考え、サッポログループ社員約4,000人を対象にDX教育を徹底し、体系的に学べる仕組みを構築しました。加えて、さらに専門性を極めたい社員を募り、データサイエンティスト、IT、経営面のDXといった分野ごとに学べる体制を整えました。即戦力になる専門人材を外部から採用するのではなく内部で育てることにこだわったのは、みんなでチャレンジしようという会社の風土に合っていると考えたから。最近は、自分で業務用のアプリを作ってみました、といった社員からの報告も増えており、頼もしい限りです」

2025年にポッカサッポロフード&ビバレッジの社長になってからは、「さらに視座が上がった」と言う。しかし、大事にしているものは変わらない。
「経営者になると、いかにお客様に喜んでいただくかに加えて、国、地域、株主、取引先、従業員などさまざまなステークホルダーを意識しなければなりません。俯瞰的な視点で物事を捉え、時には重要な経営判断をすることも求められます。そのような中、経営資源のうち最も重要なのは人財だと思っています。そして、仕事は一人ではなくチームでやるものです。社員のことやチームのあり方を常に意識し、できるだけフラットにコミュニケーションをとって社員の多様な意見に耳を傾け、いいアイデアはどんどん取り入れるようにしています。先述のように、『百の失敗よりも一つの後悔』をモットーに、失敗を恐れず挑戦してほしいとメッセージを発信してきましたが、その環境や風土を率先してつくるのは私の役目です」
「失敗の積み重ねの先に何かが見えてくると最初に実感したのは、学生時代だった」と振り返る佐藤氏。カジノダイスで過ごした4年間は、どのような日々だったのだろうか。
「熱心に勉強していた…とはお世辞にも言えない学生でしたが、ものづくりや実験は好きでしたね。特に大学4年生になり研究室に配属されてからは、卒業論文に向けて実験を重ねる日々でした。でも、欲しいデータはそう簡単には得られないんですよね。誰もいない真っ暗な校舎の中、提出ギリギリまで粘って研究を続けたことは、今では良き思い出です。大した成果を出せたわけではないのですが、最後は指導教員の茅野先生によく頑張ったと褒めてもらって。失敗に失敗を重ね、どうやったらうまくいくだろうと試行錯誤した結果、自分の中でなんとか納得のいくものを仕上げた…という経験は、自信になりました」
「でも何より楽しかったのは…」と懐かしそうに佐藤氏が切り出したのが、学園祭の話。4年間、学園祭実行委員を務めていたと言う。
「学園祭前は、学内で寝泊まりして準備に明け暮れていましたね。当時はメンバーの人数も少なくて大変だったのですが、みんなで企画して、計画を立てて、目標に向けて努力すること、仲間と一緒に何かを作り上げることが楽しくて楽しくて。無事に終わったときの達成感は、何物にも代え難かったですね。そういうことが好きだったので、社会人になってからも、チームで難度の高いプロジェクトに打ち込んだり、問題を解決したりすることに大きなやりがいを感じていました。学園祭では係を決めて役割分担していたのですが、そこで責任あるリーダー的立場になった経験は、仕事をするうえでもとても役立ちました。ちなみに、学生時代の友人とは今も定期的に会っています。たまにしか会わなくても、会えば学生時代に戻って他愛のない話もできて…ありがたい存在です」

国産レモンの生産振興を目指す農業法人(株)LEMONITY(レモニティ)を、事業内容が異なる3社で共同設立し、広島県や静岡県で産地拡大にも取り組むなど、社長に就任してからも新しい挑戦を続ける佐藤氏。最後に、後輩である学生に向けて、メッセージをいただいた。
「どれだけ努力しても成功するとは限りませんが、間違いなく成長はします。そして、繰り返しになりますが、失敗を乗り越えるほど人は大きく成長できます。加えて、もう一つ大事なのが、近道をしようとしないことです。今の時代は、インターネットやAIを活用することで簡単にそれらしい“答え”が見つかりますし、あらゆるシーンにおいて効率が重視されます。しかし、最短距離でゴールに辿り着くよりも、時間はかかっても色々なことを経験したほうが、自分の引き出しが増えます。私自身、学生時代に経験したさまざまなアルバイトを通して、世の中のことを知ることができましたし、それが自分の人生の幅を広げてくれたと感じています。だから、皆さんには、一見ムダに見えるようなことも含めて、学生時代にはいろんなことにどんどんチャレンジしてほしいと思います。皆さんの挑戦を、応援しています」
ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社